患者と家族の体験談

和田 君子さん(83)
手術とリハビリのおかげで、
今でも一人暮らしを続けています。
ご紹介文
2016年7月に洛和会音羽病院でVPシャント術を受けた和田さん(当時78歳)。ほとんど歩けなくなるレベルまで歩行障害が進んでからの手術であったが、5年経った83歳でも一人暮らしを維持している。
「急に歩くのが遅くなって驚いて…」今回は和田さんの娘さんに、手術を受ける前の様子を詳しくうかがった。
異変を感じたのはいつ頃でしたか?
「私が気づいたのは手術をする2ヶ月前です。家族で買い物をしていたら、母がいないんです。そしたら私たちのずーっと後ろの方で、よちよち歩いていて…。いつも私たちの前をすたすたと歩いて行くほど元気だったので、本当に驚きました。」
しかし、歩行障害以外に特に症状は出ていなかったため、歳のせいだと思っていたそうだ。
「足が出ない、よちよち歩くようになったというだけで、認知症状が出ているわけでもないし、漢検の勉強もずっと続けているほどしっかりしていた。だから、なぜ急に歩けなくなったのか、不思議でたまらなかった。でも70代後半も過ぎていたし、歳のせいなんだろう、そう思っていたんです。」
と娘さんは当時を振り返る。
病院を受診したきっかけは?
「私たち家族にしてみると、山登りをするほど元気だったので、“急に歩けなくなった”という印象が強くて、理由が分からなかったんです。普段から母は病院に通っていたこともあり、かかりつけ医の先生に相談したところ、脳神経外科に行った方がいいと言われました。そこで、特発性正常圧水頭症(以下、iNPH)という診断を受けました。」
もしかすると、すぐに分かってラッキーだったかもしれないと娘さんはつぶやいた。
「あの時、脳神経外科を受診することをすすめられなかったら、今どうなっていたか分からないですから。」
iNPHの診断を受けたときのお気持ちは?
「最初の病院で、脳脊髄液の流れが悪くなったことが原因で歩けなくなったこと、手術すれば良くなることも理解はできたのですが、聞いたことのない病気で、かつ、繊細なイメージを受けたので、手術と言われてもすぐに決断できませんでした。」
診断を受けてからiNPHについて調べるうちに、洛和会音羽病院の山田先生のことを知ったという。
「セカンドオピニオンで山田先生の意見を聞いてみたいと、洛和会音羽病院を訪ねました。先生は母に合う手術法を提案下さったんです。熱心に話してくださるのを聞いて、きっと治るんだろうな、手術をしたほうがいいなと強く感じて、その場で手術しようと即決しました。」
手術をされてからはいかがですか?
「手術してから本当に変わりました。よちよち歩きだったのが、『ゆっくりでいいから大きく歩いて』と言ったら歩けるし、今でも一人暮らしを続けているんです。」
それは手術後のリハビリのおかげと娘さんは言う。
「一緒に住もうと提案したこともあったんですが、『自分で家事をしたほうが元気に過ごせるから一人で住みたい』と言われて。先生にお願いして、リハビリをしっかりできるように、通常より長い期間入院させてもらったんです。そのかいあってか、今でも庭に出て洗濯もできるし、車いすもいらない。時間はかかるけど、生活することに不自由はしていないです。ね?」
娘さんのお話に耳を傾けていた和田さんは、嬉しそうにうなずいた。

洛和会音羽病院 山田 茂樹先生より
和田さんは手術前のTUGが176秒で何度も転倒を繰り返しており、一人暮らしを継続することが困難な状態でした。手術後翌日からリハビリを行い、2週間の時点でTUGは24秒まで改善しておりました。ここから2週間リハビリを延長し、TUGは18秒まで改善。階段昇降や坂道も一人で歩けるようになって退院されました。
転倒リスクが減り、自信を持って一人暮らしができる状態になってから退院したことで、手術後1年の時点でTUGは12秒に。手術から5年以上が経過した今も一人暮らしを続けておられます。和田さんにはリハビリの大切さを、改めて教えていただきました。