iNPHとは?
iNPHの原因は明らかになっていませんが、頭蓋内に脳脊髄液(のうせきずいえき)が溜まり、脳が圧迫されて様々な症状が出る水頭症の一種です。脳脊髄液の流れを良くする治療により、症状の改善が期待できます。「高齢者の水頭症」とも言われているiNPH。ここでは水頭症全体のことからiNPHについて解説していきます。
水頭症とは?
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水頭症とは、脳と脊髄の表面(クモ膜下腔)に存在する脳脊髄液が過剰に貯留し、主に脳室が拡大する病態をいいます。
脳の中には脳室と呼ばれる風船のような部屋が4つ(左右一対の側脳室・第3脳室・第4脳室)あり、脳表のクモ膜下腔(脳と脊髄の表面、クモ膜下腔のスペース)につながっています。そこに脳脊髄液(99%は水)が産生や吸収を繰り返しながら、脳や脳脊髄液を物理的に保護したり、脳内を移動することで脳の老廃物を除去していると考えられています。
※脳脊髄液に関しては全ての役割が解明されていません。
ところが、何かしらの原因で頭蓋内に脳脊髄液が溜まり、脳室が拡大します。これが原因で様々な症状が現れる病態が水頭症です。水頭症には、脳脊髄液が頭蓋内を出た後に流通や吸収に異常が生じることにより起こる、成人に多い「交通性水頭症」と、脳室内での脳脊髄液の流れが悪くなることにより起こる、小児に多い「非交通性水頭症」の2つのタイプがあります。 -
水頭症には2つのタイプがあります!
小児に多い水頭症のタイプ
非交通性水頭症
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脳室内で脳脊髄液の流れが悪くなり、脳脊髄液が脳室に溜まることで脳室が拡大する水頭症です。乳幼児に多く見られます。
乳児期は頭の骨がくっついていないため、脳室が拡大するにしたがって頭囲も大きくなります。一方、頭の骨が完全にくっついた乳児期以降に発症すると、頭囲の拡大は生じませんが、脳圧が上昇し、頭痛・嘔吐・意識障害などの症状が出ます。 -
成人に多い水頭症のタイプ
交通性水頭症
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脳脊髄液は脳室内で産生された後に、クモ膜下腔へ流れ込み、脳や脊髄の表層を流通します。その経路上で何かしらの原因により、脳脊髄液の流通・吸収が悪くなり、脳脊髄液が脳室に溜まることで脳室が拡大する、成人に多い水頭症です。
脳圧が上昇しない(正常範囲:200mm H2O以下)ことも多く、頭痛・嘔吐・意識障害などの症状は出ませんが、拡大した脳室が脳を圧迫するため、脳の機能が障害されることにより、歩行障害・認知症・尿失禁が主な症状として現れます。これを「正常圧水頭症」と呼びます。 -
正常圧水頭症のうち、
原因不明なものがiNPHです。
続発性正常圧水頭症
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正常圧水頭症のうち、約60%を占めるのが、くも膜下出血や頭部外傷・髄膜炎など原因が分かっている「続発性正常圧水頭症」です。
主な原因疾患:クモ膜下出血・頭部外傷・髄膜炎・脳腫瘍など
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本サイトで紹介
特発性正常圧水頭症(iNPH)
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正常圧水頭症のうち、約40%を占めるのが、原因は特定できないにもかかわらず脳室の拡大が認められる「特発性正常圧水頭症」です。
歩行障害・認知症・尿失禁といった症状が現れます。しかし、原因が分からない上に、高齢者によく見られる症状が多いため、見逃されることも少なくありません。全国に約37万人の罹患者がいると言われていますが、治療を受ける患者さんは全体の1割にも満たないのが現状です。 -