iNPHとは?
特発性正常圧水頭症(iNPH)とは?
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特発性正常圧水頭症(とくはつせいせいじょうあつすいとうしょう)は、何かしらの原因で、頭蓋(ずがい)内に脳脊髄液(のうせきずいえき)が溜まり、脳が圧迫され、歩行障害・認知症・尿失禁などの症状が出る病気で、「治療で改善できる認知症」としても注目されています。また、“idiopathic Normal Pressure Hydrocephalus”の頭文字をとってiNPH(アイエヌピーエイチ)とも言います。※
iNPHの罹患者は全国に約37万人いると言われていますが、その特徴が加齢にともなう症状に似ているため、歳のせいだからと見逃され、治療の恩恵を受ける患者さんは全体の1割にも満たないのが現状です。
iNPHは早期治療により、症状の改善度合いが高いという臨床結果が報告されています。病気のサインを見逃さず、少しでも思い当たることがあれば、脳神経外科・脳神経内科のある病院を受診しましょう。※「iNPH」は「ハキム病」へ改名する議論が現在行われています(2025年1月時点)
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iNPHの3徴候
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iNPHの病気のサインは、歩行障害・認知症・尿失禁の3つ(3徴候)です。特に歩行障害がもっとも特徴的な症状で、最初に出ることが多く、認知症が現れる他の病気と区別するポイントにもなります。
歩行障害に加え、認知症や尿失禁の症状が重なって出てきた場合はiNPHの可能性が高まります。 -
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最近歩きにくくなった… -
やる気が出ない、
物忘れ… -
トイレに
間に合わない…
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歩行障害
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ひざを上げづらい、すり足になる、歩幅が小刻みになるなど、歩行が不安定になります。また、ひざが外に開いた状態で(ガニ股のように)歩くことも特徴です。特に曲がったり、Uターンするときによろめきが強く、転倒することがあります。障害が強くなると、一歩目が出ずに歩き始められなくなったり、起立の状態を保持できなくなります。歩行障害が初期症状として現れることが多いとされており、3徴候のうち、治療でもっとも改善が得られる症状でもあります。
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- 開脚歩行(少し足が開き気味で歩く)
- 小刻み歩行(小股でよちよち歩く)
- すり足歩行(ひざが上がらない状態)
- 不安定な歩行(特に方向転換のとき)
- 転倒する
- 一歩目が出ない(歩きだせない)
- 突進現象(うまく止まることができない)
認知症
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自発性がなく、思考や行動面での緩慢さが目立ちます。一日中ぼーっとし、日課としていた趣味や散歩などをしなくなるといったことが起こり、物事への興味や集中力をなくし、物忘れも次第に強くなります。
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- 集中力、意欲・自発性が低下
・趣味などをしなくなる
・呼びかけに対して反応が悪くなる
・一日中ぼーっとしている - 物忘れが次第に強くなる
- 集中力、意欲・自発性が低下
尿失禁
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トイレが非常に近くなったり、我慢できる時間が短くなったりします。歩行障害もあるために間に合わなくて失禁してしまうこともあります。
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- 頻尿(トイレが非常に近くなります)
- 尿意切迫(我慢できる時間が非常に短くなります)
- 尿失禁
まずは相談してみましょう
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重要なのは本人や周囲の方が「症状の変化に気づく」こと。iNPHはすぐさま患者さんの生命に関わる病気ではありません。しかし、転倒による骨折で「寝たきり」になってしまったり、認知症や尿失禁など、患者さん本人の辛さだけでなく、サポートする周囲の方の負担をさらに増大させてしまう可能性があります。
iNPHは、早期の発見・適切なタイミングで治療を行った方が、手術を遅らせた場合よりも症状の改善度合いが高いことが、臨床試験の結果で報告されています。できるだけ早く見つけ出し、正しい治療を行うことが重要です。思いあたる症状があれば、脳神経外科・脳神経内科の受診をおすすめします。 -