診断と検査
脳脊髄液排除試験とは?
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腰椎(腰骨)の間から過剰に溜まっている脳脊髄液を少量排除して、症状の改善度合いを観察する簡便な検査方法です。この検査前の症状の程度と比べて、検査後の症状が一時的に改善すれば、治療が有効であることが期待でき、iNPHの診断に重要な検査法のひとつとなっています。
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タップテストとは?
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比較的容易で診断の精度も高いといわれるタップテストについて説明します。
iNPHは髄液循環障害によって脳室拡大と3徴候(歩行障害・認知症・尿失禁)をきたします。ですので、腰椎レベルのクモ膜下腔に穿刺針を刺し、過剰に溜まっている脳脊髄液を少量排除することによりこれらの症状が改善するかを診断することができます。そして外科的治療(髄液シャント術)の必要性を調べます。これがタップテストです。
タップテストは、横向きに寝て手でひざを抱えた状態で、腰椎の間から脊髄クモ膜下腔に穿刺針を刺します。髄液圧を測ってから、一回のタップテストで、30ml〜50mlほどの脳脊髄液を排出させます。
最初のタップテストで症状が一時的に改善することもあれば、複数回のタップテストの後に症状が改善することもあります。入院で実施する場合は、3〜7日程度の検査入院を必要とします。
症状の改善度合いについてはご家族の観察がとても重要です。症状の変化を注意深く観察しましょう。 -
診断方法
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タップテストで脳脊髄液を排出した後、症状の改善は数日以内に起こり、とくに歩行障害の改善がよく見られます。そのため現在では、主にタップテスト前後でTUG(TimedUp&GoTest)とMMSE(Mini-Mental State Examination)を行い、歩行障害と認知症の改善度合いを確認します。
TUGはイスから立ち上がり3m歩いてイスに戻って座るまでの時間と歩数を計測する、歩行(歩容)の状態を確認するテストです。MMSEでは日付や場所などの記憶に関する聞き取り、計算、模写などを行い、認知障害を30点満点で総合的に評価します。 -
タップテストの後は?
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タップテスト前後でTUGが10%以上の所要時間の短縮が見られ、MMSEでは3点以上の改善が見られた場合は、手術が適用とされ、患者さん・ご家族と相談して治療を進めることになります。
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