患者と家族の体験談

松村 和美さん(86)
受診のきっかけは息子の一言。
今は元気にごはんを食べられます。
ご紹介文
2021年5月に洛和会音羽病院でVPシャント術を受けた松村さん(86歳)。10年前の76歳頃から歩くのが遅くなる、気力がないという症状が出ていたが、iNPHの診断を受けるまでに長い月日がかかったという。手術から半年経過した松村さんと奥さんにお話をうかがった。
異変を感じたのはいつ頃でしたか?
「10年くらい前から、ちょっと歩きにくいなぁ…と感じていた程度でした。尋常性乾癬になったり、発作を起こして入院して、他の病気の方が気になってね。」
と松村さん。
「私もずっと一緒にいたのに、何も分からなかったんです。」
奥さんも様子が変わったことを感じてはいたが、歳のせいだと思い、気がつかなかったという。
「前かがみになってよちよち歩くし、歩きにくそうだなとは思っていたんです。家にいてもじっとしていない人だったのに、一日中イスに座って、ぼーっとして、面倒くさがって何もしなくなって…でも、歳のせいかな?ちょっと認知症が始まってきたのかな?と思っていたくらいでした。」
病院を受診したきっかけは?
「息子が最初に言ったんです。様子がおかしいから病院に行った方がいいって。」
息子さんの一言がきっかけだったと松村さん。
「違う病院にずっと通っていて、お薬をもらっていました。何も良くはならないけど、だからと言って飲まないと不安で、10年間ずっと飲み続けていました。でも息子がやっぱりおかしい、と言うので、息子が紹介してくれた違う病院に行ってみることにしたんです。」
息子さんが紹介してくれた病院の医師から特発性正常圧水頭症と診断され、「洛和会音羽病院」を紹介されたそうだ。
iNPHの診断を受けたときのお気持ちは?
「そんな病気があるんだなって、驚きました。」
松村さんだけでなく、奥さんも驚いたという。
「まさか、ぼーっとしたり、歩きにくそうだったのが、脳にお水(脳脊髄液)が溜まっていたことが原因だなんて思わなかったから、びっくりして。でも、前かがみで歩いて、転びそうになるから、見張っていないと不安で、そんな状態から少しでも良くなるんだったら…と考えて、手術を受けてもらおうと思いました。」
そして松村さんは2021年5月に洛和会音羽病院でVPシャント術を受けることになる。手術から半年が経過した、松村さんご夫妻のお気持ちを聞いてみた。
手術をされてから
「今は食事がおいしい!違和感もないし、手術してからとても調子がいいです。」
松村さんは笑顔で答えてくれた。
「元気な人と比べるとまだまだだとは思うけど、地面を擦って、よちよち、前かがみに歩くような感じだったのがなくなったし。あとは、やる気がなくてどうも困っていたんだけど、しゃんとして、元気になったのが本当にうれしい。5分くらいだったら散歩もできるし。」
奥さんからも笑みがこぼれた。
「おかげさまで、ここまで元気になって、本当にありがたいことだなと思っています。」
松村さんは病院をすすめてくれた息子さん、手術を担当された山田先生、そしてずっと寄り添ってくださった奥さんへの感謝の気持ちであふれていた。

洛和会音羽病院 山田 茂樹先生より
症状が出始めたのは約10年前。3年前には転倒するようになり、物忘れが目立ち、一日中ぼーっとするなど症状が悪化、1年前からは尿失禁も始まり、困っていらっしゃいました。
iNPHは早期発見もですが、(髄液シャント術を受ける)タイミングがとても大事です。松村さんの場合、発症してから10年かかりましたが、決して遅すぎるタイミングではなく、手術してから半年たった現在はかなり症状が改善しており、喜んでいらっしゃいます。松村さんご夫妻の笑顔を見ていると、(治療介入の)タイミングと、身近な方の気づきが大切だと改めて実感します。